Zendesk Relateの記事を読んでカスタマーサポート業務における感情コントロールについて学んでみた
どうも。データアナリティクス事業本部@大阪オフィスの玉井です。
Zendesk社は自社メディアとして下記のブログを運営しています。
しかし、実はもう一つ、Zendesk Relateというメディアも存在しています。
Zendesk Relateは、Zendeskという製品自体に関する記事はほとんど無いのですが、代わりに、Zendeskが扱う「カスタマーサポート」という領域に関する有益な記事を発信しているメディアです。
そんなZendesk Relateを見ていると、下記の記事がありました。
そのまま訳すと「自分自身→自分のチーム→自分の顧客…の順で大事にしましょう」みたいな感じでしょうか。この記事は何を言っているんだって話ですが、簡単に言うと、カスタマーサポート業務に関わる人の感情の重要性とそのコントロールの方法について書かれています。
どの仕事も「対人」の部分は少なからずあると思いますが、ことカスタマーサポートについては「対人」の割合が極めて大きいと思います。問い合わせをしてくる顧客の感情…それに相対するサポートメンバーの感情…。テクニカルスキルも大事ですが、「対人」のウェイトが非常に重いサポート業務では、こういった感情の問題についても知っておくことは非常に大事と思います。
自分もサポート業務に携わっているということもあり、上記の記事を読んで、自分なりにまとめてみました。そのまま訳しているのではなく、自分流に解釈してるところも多いので、原文が知りたい方は上記リンクからどうぞ。
怒っている顧客に対応するためには
怒りについて
怒りには、4つの要素があるといいます。
- 状況(situation)
- 予期しない問題(ramifications)
- ストレスの基準(baseline stress)
- 対処技術(coping skills)
これは、当然ながら「サポートエンジニア」にも「顧客」にも当てはまります。人間はみんな日々の仕事にストレスを抱えているので。中でも、特に「怒っている顧客」に対応することはストレスに多大な影響を与えます。このストレスは、そのまま他の仕事やビジネス全体に影響が及ぶ可能性もあります。
そして、「怒っている顧客」が最もされたくないことは、同じように相手から「怒り」をぶつけられたり、相手に「無関心」な態度をとられたりすることです。
こういった問題を回避するためには
NumberBarn社のカスタマーエクスペリエンスマネージャーのJenny Dempsey氏の発言が参考になります。
「他人のケアをするためには、まず自分の体を大事にしなければならない」
自分自身のケア
「感情の帯域幅」を最大化する
筆者は、「対処技術で対処できること」と「状況」+「予期しない問題」+「ストレスの基準」の差を、「感情の帯域幅」と呼んでいます。
※元記事より引用
感情の帯域幅が広ければ広いいいのは、図を見ればわかりますよね。では、最大限に広げるためにはどうすればいいのでしょうか。
飛行機の安全トレーニング動画のように、酸素マスクは隣席の人を助ける前に、まず自分でつけなければなりません。つまり、まずは各々が自分のケアから始める必要があります。
対処技術と回復力を向上させるためのアプローチ
一番重要なのは、それぞれが十分な燃料補給(食事など)と休息とることです。これはとても大事なことです。
そして、カスタマーサポートチームの場合は、誠実なミスを犯しても業務に影響がないことを保証することです。これにより、「予期しない問題」に関するチームのストレスを軽減できます。
困難な対応の後は、次の顧客対応に向けてリセットする必要がある
顧客とのやり取りが、対応者のストレス基準に加わらないようにすることが重要です。具体的な手法としては以下があります。
- 深呼吸
- 肩ではなく、横隔膜を使って呼吸する
- 繰り返し行う
- 姿勢を正してストレッチをする
- 肩や首を回すなど
- 体に力が入っているところはどこでもいい
- 笑う
- 好きなことや笑えることを考える
- 真剣に笑う(緊張したしかめ面は同じ効果を持たない)
- 水分補給
- 長い電話対応は喉が渇くことがある
- 十分な水を飲んで声帯が乾燥しないようする
- 好きな音楽を聴く
- 散歩する
- 歩くことはリフレッシュに効果的であることがわかっている
- オフィスや階段の上り下り、またはブロックの周りを散歩する
- 社交
- 誰かと短い会話をする
- かわいい写真や動画を見る
- 子犬、子猫、赤ちゃんなど
- インターネットを最大限に活用する
一番最後に注意することとして、venting(感情のはけ口)があります。自分のストレスを理解してくれている仲間と一緒に辛いタスクに対応することはある種の快感をもたらします。しかし、それが顧客に対する軽蔑につながるのであれば、それは逆効果になりかねません。顧客や同僚への共感を犠牲にしない範囲で、まずは自分自身を大切にすることが大事です。
チームメンバーのケア
ケアの方法
サポート対応をしてると、どうしてもヘビーな対応を強いられることがあります。
メンバーにはリセットの機会を与えることで、その後の業務に集中する能力を大幅に向上させることができます。休憩なしで業務を続けなければならない場合、ストレス基準が蓄積され、ミスや燃え尽き症候群につながることさえあります。それらはチームの知見と生産性を犠牲にします。
そんなメンバーがいた時、メンバーに対してできる事としては下記があります。
- 「大丈夫ですか。」と声を掛けることから始まる
- 「私にエスカレートする必要がありますか?」と尋ねることで、困難なやり取りを引き受ける
- 飲み物やスナックを持ってくる等の、小さいけど思いやりのあることを行う。
- ふりかえりの時などで「それは大変でしたね。」と声を掛ける。
- これにより、メンバーは、自分が見られていることを知ることができる
- (業務上適切な範囲で)ハグをする。
- ハグは全ての人に役に立つ。
これらのほとんどは簡単にできます。これらにより、サポートメンバーがいかに困難で感情に関わる業務をしているか理解することができます。管理者や役職者に限らず、メンバー全員がお互いに気を配りましょう。
ボランティア
チームを再充電し、それぞれの共感力を高める別の方法(outside the box)として、地域ボランティアに参加するというものがあります。
Zendesk社とドレクセル大学の調査によれば、Zendesk従業員のうち、最低二ヶ月に1回はボランティアをしていた従業員は、同僚に助けを求める行動が多く、仕事に対する満足度が高いとのことです。
怒っている顧客に対するケア
怒っている顧客=双頭の龍?
サポート業務というものを行っていると、怒っている顧客の対応をしなければいけない場面が少なからずあると思います。
こういう時、顧客の抱えている問題にできる限り迅速に対処することが最善の方法のように思われるかもしれませんが、いわゆる「問題解決モード」に突入するのは、実際には効果がなく、顧客の怒りを増幅させることさえあります。本来は、まず顧客の感情に対処する必要があります。
Zendesk社でエンタープライズおよび戦略的アカウントのグローバルアドボカシー担当ディレクターを務めるBen Collet氏は下記のように例えています。
「すべてのチケットは、『感情的なもの』と『技術的なもの』…2つの頭を持つドラゴンである。『感情的な頭(エモーショナルヘッド)』を扱わなければ、あなたに襲いかかり、『技術的な頭(テクニカルヘッド)』を守ってしまう」
「ドラゴン退治」は大変ですが、サポート対応を中世ファンタジーの戦いと考えるべきではありません。あくまで、これらは私たちが話している顧客です(とはいえ、ドラゴンの例えは非常にわかりやすいですよね)。
「感情的な頭」を調教する
著作家・講演家のジョン・C・マクスウェル氏は下記の通り言っています。
「人は、あなたがどれだけ気にかけているかを知るまでは、あなたがどれだけ知っているかを気にしない」
「怒り状態」の顧客は、サポート側のことを味方と信じてないかもしれません。むしろ、誤解されている・嘘をついている・裏切られた…みたいに感じているかもしれません。この状態では、サポートが提供する「事実に基づく情報」は、言い訳のように聞こえるかもしれませんし、同情的なメッセージも、不誠実あるいは皮肉にさえ受け取られるかも知れません(特にテキスト形式では、トーンを伝えるのが難しい)。
そういう時は、リフレクティブリスニングが有効です。基本的には対面で使用する技術で、相手と直接向き合う、アイコンタクトを維持する、相手の姿勢の真似をする、相手の言うことに関心を示す、うなずく…などの方法があります。しかし、これらは電話やメール等では実行するのは難しいですね。そんな時は下記のことを実行しましょう。
- 最適なチャネルを選択する
- メールのやりとりでは、トーンを伝えて相手の話を聞いていることを示すのは難しい
- チャットや電話を開くことを提案すると、コミュニケーションが容易になる
- 顧客に発言権を与える
- 顧客に問題内容を中断させずに話させる
- サポート側にも話す機会があるので心配は無用
- 「言葉によるうなずき」を使用する
- 電話やチャットの場合、「そうですか」「はい」「わかりました」などの素早い返答で顧客をフォローすることを示す
- メモをとる
- 顧客が提供する情報だけでなく、顧客の感情も書き留める
- 「Mad as hell,」など
- 聞いたことを反映する
- 例えば「私が聞いたことを振り返ってもいいですか?」と尋ねて、「私はあなたが怒っていると聞いています…。」と続ける
- 顧客の状況をできるかぎり反映したことを発言する
- 相手の気持ちを確かめる
- 顧客がどう感じているかを考え、それを受け入れるようにする
- 「私もそう感じます」「私は、それがどれだけイライラするか理解できます」など
- 必要に応じて、心から謝罪する
- 「こんなことになってしまって申し訳ありません。」のような単純なものでいい
- 状況を是正するための具体的なアクションを約束するものではない
- 相手の気持ちに謝ってはいけない
- 「私は、あなたがそう感じることを残念に思います」
- 安心感を与える
- 顧客に、できる限りのことを行うことを伝える。
- 継続できない約束はしない
- 返金など
これらの方法は確実ではありません(特に初回)。顧客の気持ちを反映しようとしても(顧客の言葉をそのまま繰り返しても)顧客はそれを訂正してくるかもしれません。しかし、それで問題ありません(そもそも怒りを言葉で表現することは難しい)。
フラストレーションを感じないようにし、顧客の気持ちを見つめ続け、(自分は)顧客の味方であることを確認し、安心させましょう。
「技術的な頭」を調教する
顧客側が「このサポートは我々の視点を理解し、支援することにコミットしている」と信じてくれたら、解決に向けて作業を進める必要があります。これは、顧客が「で、それでどうするんですか。」と尋ねるポイントです。つまり、双頭の龍の「技術責任者」に対処するということです。この問題を解決して結論を出す方法については、下記があります。
- 「ASK」を特定する
- 顧客が必要としているのは何?
- 情報?
- 何かをセットアップしたり、以前はうまくいっていたものをトラブルシューティングしたりするのに助けが必要?
- 返金?
- 交換?
- 最終的な解決策は、顧客が求めているものとは異なる場合があるが、これは重要な出発点である
- 顧客が必要としているのは何?
- 潜在的なニーズを探す
- 顧客が(自分たちに)必要なものを理解していない場合がある
- 必ずしも顧客の責任ではない
- ドキュメントやアドバイスが正しくなかったり不完全だったりしたために、誤解されていた可能性がある
- 問題を正確に診断するための知識や専門知識を持たずに、独力で解決策を探していたかもしれない
- 質問を行い、サポートと顧客が同じ段階にいることを確認し、適切なポイントにいることを確認する
- 顧客が(自分たちに)必要なものを理解していない場合がある
- 「要約していいですか」と尋ねる
- 顧客の状況に敬意を表し、神経を落ち着かせるのに役立つ
- すべての詳細が正しいことを確認する(メモを取るのがよい)
- 状況を「透明」にする
- 問題の内容によっては、即座に回答できなかったり、解決の可能性をリセットしなくてはいけない場合がある
- 顧客の気持ちを心に留めておき、これが顧客の怒りを再燃させるかもしれないことを(顧客に)知ってもらう
- 「これはあなたが聞きたいことではないことはわかっていますが…」
- 「あなたにもっといい知らせがあればいいですが」
- 「これはおそらく混乱を招くでしょう」
- これらは、顧客の立場を理解していることを示すのに役立つ
- いずれの場合も、状況、解決策、次のステップについて、可能な限りすべての情報を提供する
- 教育し、権利を与え、励ます
- 顧客が必要とするのは、問題を自分で解決できるという知識と自信
- 顧客に必要な情報を示し、解決へのステップを順を追って説明し、顧客が問題解決を達成したときに、チアリーダーになる
- 必要に応じて下記のフレーズを提供する
- 「その通りです」
- 「正しい方向に進んでいます」
- 「(あなたが)どうやってそこにたどり着いたのかわかります」
- 回避策を提案する
- 解決策を常に提供できるわけではない
- しかし、顧客の問題を回避する方法が別途存在することもある
- 時間をかけてこれらの可能性を検討する
- 顧客が求めているものとは異なるものを提供するために余分な作業が必要な場合は、このアイデアは歓迎されない
- しかし、通常は「最後まで目を通してくれる努力」を顧客は高く評価する
- 解決策を常に提供できるわけではない
- フィードバックに感謝する
- 顧客はあきらめることはできるが、(サポート側が)顧客が去った理由を知ることはできない
- 「怒っている」ということ は、顧客が積極的に取り組んでいるということ
- 顧客が助けを求めてきたということは、他の顧客のためにも、問題を解決する機会が与えられたということ
- 長い目で見れば、(サポート側の)ビジネスにも役立つ
- 「この問い合わせを持って我々のところに来てくれて本当に感謝したいです。これが本当に困った状況だったことは知っていますが、これは私たちが物事を改善し、他の誰もこれをやり直さなくて済むようにするのに役立つでしょう。」というような言葉を顧客が聞いたらどうなるか考えてみよう
- 顧客はあきらめることはできるが、(サポート側が)顧客が去った理由を知ることはできない
- フォローアップ
- 下記を実行できる場合は必ず実行する
- 別のチームにエスカレーションする
- ドキュメントチームに、公開されているナレッジベースに明確な説明の追加を依頼する
- 製品、サービス、またはポリシーの変更を推奨する
- …など
- 可能であれば、顧客に連絡を取り、変更を実装できるようになったことを伝える
- 顧客との関係を構築し、顧客の経験を本当に大切にしていることを示すことができる
- 下記を実行できる場合は必ず実行する
まとめ
どれだけ頑張っても問題を解決しても、顧客が満足していない場合もあります。しかし、今回紹介できた手順を実行して顧客が笑顔でいない場合でも、それは失敗ではありません。少なくとも、できる限りのことをすることで気分が良くなり、顧客はその努力を尊重するでしょう。
こういった時は、最初に紹介したセルフケアが必要になってくるかもしれません。そうすれば、この出会いの間に経験したどんなストレスも取り除いて、次の顧客対応に備えることができます。おそらく、次の対応は簡単になるでしょう。
わたしの感想
チームメンバーのケアのところの「ハグをする」は、日本の文化的に非常に厳しいものがありますね…。また、ボランティアも実行に移すのは難しい…。
しかし、それ以外の部分については、サポート業務に限らず非常に有用な情報だったと思います。特に怒っている顧客との対応方法はぜひ実践してみたいところです。
ただし、一番優先するべきなのは「自分自身」です。それを忘れないようにしましょう。困ったときは同僚などに相談しましょう。